「アート」を暮らしの隣に〈妙蓮寺 小田桐奨〉(後編)

つくり手ケのまち

前編はこちら

インタビュアー:酒井 洋輔
(ケの日のこのまち編集長 くらしとすまいの松栄三代目)

日々のコーヒーからリソグラフまで

酒井:

TMTCの取組みについて詳しくお伺いしてみたいと思うのですが、

「食やリソグラフなど、色々な切り口でトライができるカフェ」というアイデアはどのように生まれたものなんでしょうか?

小田桐さん:

そうですね…。まず、僕自身がアーティストとして何かを作るっていうことを普段しているので、「作る」っていう行為が自然とカフェの中に生まれるといいなとは考えていました。

もう一つは、公に開かれたカフェのあり方を、自分なりに提案してみたかったというのもあります。公共施設のなかに、リソグラフやキッチンをみんなでシェアして使える場があったらきっと素敵だろうと。

酒井:

小田桐さんなりの「公共」を考えたからこそ、生まれた空間だったんですね。

食に挑戦する人が気軽に利用できるシェアキッチン「Food Lab」

酒井:

本格的なカフェメニューも魅力的ですよね。

個人的には、チキンビンダルのカレーが本当に美味しいなと感じているのですが…もしおすすめの一品があれば教えてほしいです。

小田桐さん:

それがね…。全部なんですよ(笑) 結構色々な人に聞かれるんですが、難しくて。


注文が多いのは、カレーとキャロットケーキ、あとはビキニ(カタルーニャ地方の名物ホットサンド)あたりが人気です。また、L PACK.の中嶋が焙煎した豆を使用したコーヒーも、カフェオレから水だしアイスコーヒーまで好評ですね。

さくさく食感とチーズが香ばしい「ビキニ」はスペイン帰りのスタッフが提案したものだとか

小田桐さんの一日

7時
起床 飼い猫と一緒に息子を起こしに行く
8時

息子を学校に送り出し、出勤
9時〜

開店前 料理の仕込みや打ち合わせなどの業務
11時

オープン
17時半

営業終了
18時〜
掃除や諸々の仕事を済ませ、帰宅
24時
就寝

「アートと暮らし」の接点を大切に

酒井:

以前TMTCにお伺いした時に展示されていた写真をいくつか買わせてもらって、今会社のデスクの脇に貼っているんです。ちょっとしたアートが身近にあるだけでQOLが上がる感じがします(笑)

小田桐さん:

ありがとうございます。実際、ギャラリーや美術館って普通に生活してるとなかなか通う時間がなかったりもするじゃないですか。だから僕はTMTCのような空間にアートを持ち込むことには意味があると感じていて。

カフェなんだけど、意識すれば作品にも視点が向いて、気になったら手に取ってよく見たりして、買えるものだったら買えるっていう行為が生まれる。そうしたきっかけが自然に生まれる場所が作りたいなっていうのは、常々ありますね。

酒井:

印象的だったのが、シニアの女性が2人、店内の柔らかい日差しの中で楽しそうに会話してる姿を見て、小田桐さんが「僕にとってお店で起こる出来事、その日常がアートなんです」と話していたことをよく覚えていて。

その言葉を聞いた瞬間、僕の目にも、お客さんの団欒する風景が写真を切り取ったアートのように見えたんです。この人たちにとってすごく重要な時間が流れていることを理解できて。

小田桐さん:

酒井さんの仰る感覚が多分一番近くて、TMTCが誰かにとって日常の重要な時間になっていること、ここでアートを身近なものにしていくこと、それがいつか重要なものとして認識されるかもしれないっていう、その感覚は常に持っていますね。

ちなみにここのテーブルの一部も、僕らが作った作品なんですよ。この「大宮市民会館」って書いてある、映画フィルム用のリールを再利用したテーブルは、2023年の埼玉国際芸術祭の時に作りました。

酒井:

至るところにアート的な目配せがあるのが、本当に面白いですね。


渋谷に生まれる新たな「ミュージアム」

酒井:

小田桐さんは今、渋谷で準備されている新たなプロジェクトに奔走されているとも聞いています。一体どのようなプロジェクトなのか、教えてもらえますか?

小田桐さん:

はい。2026年春、渋谷の駅前でアートと飲食スペースが渾然一体となった新しいスペース「Museum of Imaginary Narrative Arts(MINA)」をオープンする予定です。「架空の物語をテーマにしたミュージアム」がコンセプトで、今は様々な企画に向けて動き出しているところですね。

酒井:

渋谷の駅前に、ミュージアムができるんですね! とてもわくわくします。

小田桐さん:

はい。これから再開発が行われる活用地に100平米ほどのスペースを設け、アーティストやクリエイター、そこに滞在するお客さんとともにミュージアムを作っていくようなプロジェクトになっています。展示だけでなくカフェの運営や、教育・普及のためのコンテンツづくりも手がけていきます。

きっと「MINA」のような場がこれからの渋谷の街にも必要なんじゃないかなって思っていまして、意気込んでいるところですね。

酒井さん:

小田桐さんのこれからの活躍から、ますます目が離せませんね。MINAのオープン、そしてTMTCの今後の展開を楽しみにしています!

Try Many Times Club

住所
東京都大田区池上1丁目32-8 大田区立池上会館 1F
WEB
https://trymanytimes.club

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この記事を書いた人

石垣 慧

石垣 慧

91年生まれの妙蓮寺在住。「出版社ビーコン」を主宰するほか、編集者として、また文筆家・校正者としても幅広く活動中。

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