パンを日常の「主食」に〈Boulangerie 14区 八木夫妻〉(後編)

お店とケのまち

妙蓮寺にある、人気パン屋さん「Boulangerie 14区」の、八木夫妻にお話しを伺ってきました。

プロフィール

八木 哲郎(パン作りのシェフ)

1974年福岡県生まれ。大学卒業後「(株)神戸屋」に入社し、パン作りを学ぶ。2004年に渡仏しパリの有名店に勤務。新店舗立上げ等にも携わった後、世界を旅しながら帰国。日本ではパン学校の講師としても活躍。

八木 佐樹子(料理人)

1979年岩手県生まれ。宮城県仙台市のニューワールドホテル(現:仙台ヒルズホテル)で洋食部門を担当、2004年、哲郎さんと時を同じくして渡仏。数々の星付きレストランで修業を積んだ後、出張料理人として活躍。 2012年、「Boulangerie 14区」を夫婦で開業。

前編はこちらから

妙蓮寺でパン屋開業

酒井:

で、、、なぜ、フランスで修行していた二人が、妙蓮寺で開業することになったんですか?

佐樹子さん:

シェフとはフランスで知り合って、帰国後、通勤に便利な妙蓮寺に住むことになりました。

シェフは渋谷でパン学校の講師をしていたのですが、独立の意思が固まったのを機に、お店の出店場所を探し始めました。

物件探しを進める中で、今は亡き「東横妙蓮寺不動産」の永井さん※2に、『じゃあ、ちょっと待っててよ』 と、今の店舗を紹介されたのがはじまりでした。

本当に運命的な出会いでした。

その後、永井さんには事務所でお茶を飲みながら、昔の妙蓮寺のお話しを伺ったり、事あるごとにお世話になり、大切な恩人の一人でもあります。

2018年に亡くなったときには、奥様と一緒に大泣きしましたね。

※2:東横妙蓮寺不動産:妙蓮寺駅前の不動産店、2018年、代表の永井章之氏の死去に伴い閉店

佐樹子さん:

この辺は、わたしたちの地元ではないし、開業しても大丈夫かな…という不安はありましたが、永井さんや妙蓮寺さんのあと押し、タイミング・ご縁が重なり、奇跡的にこの場所で開業をすることができました。

たぶん、永井さんたちが居なければ、全く別のところで出店していたと思います。

今では、本当にご縁があったんだな、と感じています。

酒井:

店名の“14区”の由来は何ですか?

佐樹子さん:

前述の通りフランスでは、あちこちで『カツカツの生活』を続けていたのですが(笑)

最初に『独り立ちして生活ができた』と感じたのが、パリの14区で暮らしていたときで…

最初の成功の地、として記憶している地名を、店名にいれました。

おいしいパンの方程式

酒井:

パン屋さんの、1日の流れはどんな感じなんですか??

佐樹子さん:

最近はスタッフの子たちも育ってきてくれているので、シェフは7時頃起きて、8時頃お店に行ってから、パンの成型や仕込みを行っています。

1番大事なのは、粉と水を結合させる作業で、これをきちんと行うことで、美味しいパンができるんです。

バケットは2~3日前から仕込をしますし、長いものだと生地ができるまでに1週間ほど時間がかかるパンもあります。

パン生地は生き物なので、シェフはずっとつきっきりで仕込をしてて、本当に子どもを育てるように接しています。

その後、お店の営業が終わったら帰宅して、晩御飯を24時くらいに食べたり、試作をしたり、永遠と続く書類業務を処理をしたり…(笑)

そんなパン漬けの日々を過ごしています。

(インタビュー時も、シェフは生地から離れられないとのことで、奥様にご対応頂きました、ありがとうございます!)

仕込みに3日かかるバゲット、美味しいはずです!

酒井:

14区さんのパンは、どれも美味しいんですが、特に人気のパンは?

佐樹子さん:

そうですねー…
バケット」「クリームチーズアンパン」「デニッシュ」が人気です。

あと、様々な小麦粉で試行錯誤を重ね、数か月かけて作った『妙蓮寺食パン』もご好評いただいています!

酒井:

色々あると思うんですが、14区さんのパンへのこだわりを教えてください。

佐樹子さん:

安心安全、美味しいのはもちろんですが…

心がけていることは『パンへの探求心』です。

「高くて質のいい粉」=「おいしいパン」ではなく、

「質のいい粉」+「技術力」+「経験による知識」=「おいしいパン」

なので、日々研究、試作、努力を重ねています。

定番商品ほど、マイナーチェンジを繰り返しているので、皆様にご愛顧いただけているのかなと思います。

たまに『〇〇パンのここが、前よりおいしくなった!』と、1g程度の微量な差にも気づいてくださるお客様がいらっしゃったりして、驚きと共に嬉しくなります。

酒井:

海原雄山みたいなお客様もいるんですね(笑)

佐樹子さん:

日本には、クオリティの高い粉を作れる製粉会社がいくつもあるんですが、

それらを掛け合わせて、独自ブレンドをし、今までの経験と技術を注ぎ込むことで、有名店や、海外のブランド粉にも負けないパンを作ることができる

と自負していますし、常にそうありたいと思っています。

うちで一番こだわっているのは、ハード系のパンです。

そしてシェフのモットーは『主食としてのパンであることですね。

酒井:

最後にひとこと頂けますか??

佐樹子さん:

うちのお店でパンを買ってくださるお客様に、心から『ありがとうございます!』とお伝えしたいです。

数あるパン屋の中から、14区を選んでご来店くださり、日々感謝の気持ちでいっぱいです。

開店時に、”妙蓮寺でパン屋は3年しか続かない”なんて言われたことがあるのですが、お陰様で来年10周年を迎えられるのは、お客様、スタッフのみんなのおかげだと思っています。

その気持ちを忘れずに、これからもパンと向き合っていきたいです!

編集後記

元々14区さんのパンのファンでしたが

特に好きなのが「バケット」と「妙蓮寺食パン」と「クロワッサン」。

これは、一度食べると素人でもわかる美味しさ!!

あと、「各種サンドウィッチ」が最高に美味しいんです。

夫婦仲良しの秘訣は?とお伺いしたところ、

「互いに干渉し過ぎないで、リスペクトすること」と回答が返ってきました。

パンのプロである哲郎さんのパンと、料理のプロである佐樹子さんのお惣菜が、合わさった惣菜パンだから美味しいのかと、一人納得してしまいました(笑)

パンのこと、スタッフのことを「こども」と表現し、このまちのパン屋としての使命感を背負って、安心安全で美味しいパンを提供してくださっている想いに、心を打たれた取材でした。

ブーランジェリー 14区

住所
横浜市港北区菊名1-4-2
電話番号
050-5872-8602
Instagram
https://www.instagram.com/boulangerie.14/

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この記事を書いた人

酒井洋輔

酒井洋輔

編集長
くらしとすまいの松栄三代目。妙蓮寺生まれ・妙蓮寺育ち(悪そうな人は友達ではない)農業を参考に、不動産と建築、街づくりが循環し、持続可能な形で成長するビジネスモデルを探求中。

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