街に愛されるパン作りを『PAN DAY』後編

お店とケのまち

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こだわりの製パン

石垣:

PAN DAYさんのパンは、ドイツ製の石窯オーブンで焼き上げたふっくらもちもちの食感が魅力です

大橋さん:

はい。PAN DAYではドイツ「MIWE」社の石窯オーブンを設えてパンを焼き上げています。このオーブンは蓄熱性がいいので高温短時間で焼けるんですよね。

水分を飛ばさず素早く焼き上げるので、もちもちの食感に仕上がります。上質な蒸気が出るので、バゲットなど、ハード系のパンを焼く時にも重宝しますね。

石垣:

なるほど。オーブン次第で、パンの味わいは大きく変わるんですね。

大橋さん:

はい。そこはパン作りの上で一番大事なところです。製パンって工程が後ろに行くほどもう後戻りはできないんですよね。例えばちょっと発酵が足りなかったら発酵を足す調整ができるんですけど、焼きすぎたら戻せない。

それくらい最後の「焼き」は大切なポイントなので、オーブンだけは絶対過去に使い込んだことのある製品にしようと思っていました。今では期待通りの相棒として働いてくれています(笑)

石垣:

その高級オーブンで焼き上げられる看板商品のバゲット、こちらはパン作りの先生からの直伝と伺っています。その美味しさの秘密を教えていただけますか?

大橋さん:

看板のアルチザンバゲットでは佐賀県産の「さちかおり」という小麦粉を使って、皮はパリッと、中はもちっとなるよう、手ごね製法で丁寧に焼いています。「切った瞬間に小麦の匂いがすごくする」ってお客さんに言っていただくこともあって、そういう風味が特長ですね。

「さちかおり」はすごく甘いんですよ。バゲットなのでお砂糖などは一切入れていませんが、噛めば噛むほど、小麦本来の甘さが出てくるんです。

看板商品のひとつ、アルチザンバゲットは驚きのもっちり食感がクセになる

石垣:

人気トップ3を教えていただけますか?

大橋さん:

カレーパンを筆頭に、ショコラ、メロンパンかクリームパンが続く感じですね。今週はなぜか明太子フランスがやたらと売れます…(笑) ちょっと暑くなってきたからなのかな。(※取材は6月でした)

その時々で売れ筋は少しずつ変わってきますね。今は40種類くらいのパンを並べていますが、気持ちとしてはもう少し増やしたいなとも思っています。

石垣:

これだけの種類を毎日焼き上げているんですか?

大橋さん:

はい。うちは古き良き「リテールベーカリー」という方式、つまり毎朝焼き上げたパンを当日売りするという方法にこだわっています。ラスクなどのお菓子を除けば、何も翌日に繰り越していません。

販売ロス・フードロスのリスクもあるので売る側としても気を揉む方法ではあるのですが、やっぱり不要な保存料や添加物は使いたくないんですね。一番大事な「焼き立てのパンの美味しさを街のお客さんに伝える」ことを大切に、日々工夫を重ねています。

大橋さんの一日

石垣:

パン屋さんというと、とにかく朝が早いイメージがあります。

大橋さん:

そうですね。朝4時に起きて、10時開店前までに8割9割くらいのパンを焼き上げておく。

そこからは販売したり製造したりをこなして、18時の閉店後に家に帰ります。

石垣:

一日の中でリラックスタイムとかあるんですか?

大橋さん:

どうですかね……。パン作ってパン売ってるのが好きなんで。仕事をしていてもそれほどストレスがないんですね。

あえて一日の中でリラックスタイムと呼ぶなら、オープン時間直前に飲むコーヒーですかね。インスタントコーヒーなんですけど、そこで一息つくのが好きかなあ(笑)

4時
起床
4時30分

出勤
5時

製パン作業開始
10時

開店
18時

閉店 締め作業をした上で自宅へ
22時

就寝

街に愛されるパン屋さんになりたい

石垣:

これからPAN DAYというお店を、どんな風に続けていきたいと思っていますか。

大橋さん:

うーん……。たとえるなら「町中華のようなお店」でしょうか。たまにテレビに出るような町中華で、ものすごい数のメニューがあるお店が映っていたりするじゃないですか。あれを目指してます。

お客さんにこんな商品がほしい、あれは作れないか、って要望を聞いて育っていったお店。

石垣:

意外な答えですが、ちょっと分かるかもしれません(笑)  

大橋さん:

そうでしょう(笑) 「他のお店にないけどこういうパンが食べてみたい」という話に応じてパンを作ってくれたら、きっとお客さんも楽しいかなと思って。そういうお店にしたいかな。

最近もお客さんのご要望でクロワッサンを作りはじめました。今はね、小さいお子様から違う動物のパンを欲しいって言われていて。定番はパンダだけなんですが、夏はアザラシとかお魚とかヤドカリとか、海の動物をモチーフにしたパンを作ってみてもいいかなとか。

石垣:

本当に「お客さんのためのパンづくり」という姿勢を大切にしているんですね。

大橋さん:

はい。自分が作りたいパンじゃなくて、お客さんが欲しいパンを作りたいなってずっと思っています。

もちろん、僕も職人なんで作りたいようなパンを綺麗に焼き上げるのは、やっぱり達成感あるんですよ。でもそれが、本当にお客さんの求めているものとは限らないですよね。

石垣:

そういう信念が、きっと常連さんにも伝わっているような気もします…!

大橋さん:

もしそうだったら嬉しいですね(笑)

PAN DAYは僕自身の表現をするお店というよりも、街のお客さん一人ひとりにとって大切なお店になっていってほしいです。

街の小さいパン屋さんだからこそできる、対面のコミュニケーションを大事にしたパン作りを続けていきたいですね。

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PAN DAY

住所
横浜市港北区菊名6-23-2内田ビル1F
Instagram
https://www.instagram.com/p/DGiMvgbTMHA/

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この記事を書いた人

石垣 慧

石垣 慧

91年生まれの妙蓮寺在住。「出版社ビーコン」を主宰するほか、編集者として、また文筆家・校正者としても幅広く活動中。

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