前編はこちらから。
ここまでは妙蓮寺に住みはじめた経緯や、新たな道を模索するまでを書いてきました。ここからはいよいよ『生存報告誌BEACON』制作の日々を振り返っていきます。(石垣慧)
あらためて、雑誌を作ってみる

出版レーベルも立ち上げたことで、復活号としての『生存報告誌BEACON』第4号から作ってみようという気持ちも固まってきた。そうすると、自然と新しいテーマ性みたいなものも見えてくる。それらを整理すると、以下のように書き出せるだろうか。
●2020年から歩み出して、ケのまちへと移り住んだ自分の途中経過を体現するような一冊にしたい。これは僕自身にとっても意味があることだし、「20年代の折り返し地点」に立つ多くの人にとっても節目の記録となるだろう。
●原点(本誌VOL.1)に立ち返る、リソグラフ印刷と中綴じを採用したDIYライクな造本設計。
●いつもお世話になっている本屋・生活綴方で作ってみる。
以上のような指針を持って臨んだ『生存報告誌BEACON』VOL.4だけど、実際の制作はなかなかに大変だった。春に企画をまとめてから12月に発売するまで、期間としては7~8ヶ月くらいかかっただろうか。京都、能登、茨城などの様々な地域へ赴いて取材したり、寄稿を依頼したり。制作体制も刷新して、イラストレーターやデザイナーとの関係も一から作っていった。執筆、受け取った原稿の編集も並行して行いながら、予算についても考えた。

今回からは「個人的なZINE」ではなく、より広い書店に流通するようにバーコード(ISBNコード)も付けた。これまでは初版500部規模だったのが、2000部規模までアップスケールしたのも大きなチャレンジである。一応は4作目だというのに、ほとんどゼロベースではじめるような工数の多さ。まあ全部がはじめてだからしょうがないんだけれども。

それでもその過程で痛快な出会いや面白いアイデアは山ほど盛り込むことができた。特に気に入っているのは裏表紙部分、松栄建設さんから出稿いただいた「昭和レトロ味のある広告」。デザインはtegusuさんが手がけており、実はコピー部分は僕が書いていたりする。妙蓮寺チームで作った地元愛溢れるオリジナル広告なので、ぜひお見かけの際は広告部分まで読んでみてください。
本屋・生活綴方で刷りまくる

いよいよデザイナーとレイアウトを詰め、入稿データが完成したのが11月の末。今回は本屋・生活綴方のリソグラフ機を活用させてもらう形で、自身で印刷・製本作業までを行うと決めていたので、ある意味ではここからも本番、という感じだ。
それまでパソコンとにらめっこしながら編集作業をしていたのが、ここからは一気に印刷機と向かい合いながらの現場作業になる。まさに「ジョブチェンジ」のような生活の変化に当初は不安しかなかった。初日のInstagramへの投稿を見返すとこんなことが書いてある。
「B4判のフロンティタフの山。それを多分4万回くらい刷る……。あらためて、途方もない作業だなあと思う。試しにベタ面の多い折からはじめてみたけど、早々に刷られた紙が排紙トレイで暴れ出した。用紙にインクが多いと野球のスプリット球のように垂れていくので、こういうことが起こる。だいたい50枚ごとに印刷を止めてチェック。これを何十回も繰り返す。速効でインクも空っぽになった。結局今晩は4面(8頁)だけで作業中断。…無事に終わるかなあ。」

実際にこの投稿で出した見込みの数字は完全に間違っており、結果的に52版、10万4千回分の印刷が必要になった(自分がどれだけ数字に疎いのかよく分かる)。そしてその10万回は単に「きかいにおまかせ」では済まないのである。ベタ面が多ければインクの重みで紙は垂れたり暴れたりするし、今回は書籍用紙・クラフト紙・色上質などを織り交ぜた紙替えにこだわったので、紙の特性に応じて印刷の難易も変わった。
重ね刷りする紙をどこに置いておくか…など限られた時間とリソースでできる方法に知恵を絞る。ランナーズハイのような印刷作業の末、ようやく4万枚相当の印刷が完了した。

その次はいよいよ88ページ分の製本作業へ。4工程に分けた丁合作業を行い、大型のステープラーでがちんと綴じる。印刷漏れなどもあるのでチェックだけでも大変な作業量になるのだが、初動分は本屋・生活綴方のお店番仲間の皆さんに手伝ってもらうことができた。前段の印刷だけでくたくたになっていた自分を支えてくれた皆さんに感謝しかありません…。本当にありがとう。
というわけで、

…そんなこんなもあって、

ついに!『生存報告誌BEACON』VOL.4が完成した。企画から製本まで、文字通りにメイド・イン・妙蓮寺な雑誌だ。ケのまちの皆さんのサポートと、根気強い作業が結実した入魂の一冊と言えるのではないだろうか。
その道のりは平坦ではなかったし、改善したいことや見直したいことはいくらでも挙げられる。それでも、僕はDIYな雑誌制作にチャレンジできた自分を誇りに思うし、何よりもそれが面白かったからこそ、最後までやり通せたのだとも思うのだ。
というわけで、「制作記」は以上となります。
あらためて本誌『生存報告誌 BEACON』VOL.4のご紹介をしますと、今回の特集テーマは「SO FAR SO GOOD(=今のところ順調)」。2020年代の折り返し地点から見える景色として、焼き芋売りのバイカー雑記、ラジオリスナーの濃密トーク、カトマンズ回想録からラトビア留学記まで、20名超のポートレイトを並べています。
詳しい内容はこちらからも確認できます。
本屋・生活綴方ほか各書店にて好評発売中ですので、皆さまもぜひ手に取ってみてくださいね。

出版社ビーコン / BEACON.pub
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