今回は妙蓮寺在住のアーティストである小田桐奨さんにお話を伺ってきました。
実は編集長の酒井とは、妙蓮寺でのパパ友の間柄でもあります。
取材は小田桐さんが営む大田区 池上の「Try Many Times Club (トライメニータイムズクラブ)」で行いました。同店の多彩な魅力にも触れながら、小田桐さんの作家活動の歩みに迫りました。
インタビュアー:酒井 洋輔(ケの日のこのまち編集長 くらしとすまいの松栄三代目)

プロフィール
小田桐奨
1984年青森県生まれ、妙蓮寺在住。大学時代は空間造形学科で建築・インテリアを学んだ後、中嶋哲矢氏とのユニット「L PACK. (エルパック)」で活動。LPACK.では、アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となることを目指している。

酒井:
まずは恒例の「関係のない質問」からどうぞ!
- 好きな音楽は
- 英珠さんというジャズボーカリスト
- 好きなYouTube
- 「プレミアリーグ・トークショー」というリーグ事情を語るチャンネル
- 最後に旅したのは
- 今年の夏、台湾に
- コンビニでよく買うもの
- ビールです。コンビニが一番冷えてるので(笑)
- よく使うアプリ
- Messenger
- 洋服で好きなブランドは
- 特にないです
- 息抜きする場所は
- 自分のお店
- 人生最大の買い物
- まだしてない気がする
- 人生で一番影響を受けた人
- 大学生の時に通っていたレストランのおじさん
- 1億円あったら
- 周りの人たちのアート作品を買いたい
会話つまみ食い
アートと日常が交差する場所
小田桐さんが手がけるTry Many Times Club(以下 TMTC)は大田区立池上会館内にあるクリエイティヴなスペースを設えたカフェ。
こだわりの焙煎コーヒーや人気のカレーなどが楽しめるだけでなく、店内にはリソグラフ印刷機を備えたスタジオや、本格的な厨房を設えたシェアキッチン「Food Lab」の提供なども行っています。


酒井:
今日はTMTCに来ています。アート作品などもある広々とした空間が気持ち良いですね。ここは始められてどれくらいになるんでしょうか?

小田桐さん:
オープンしたのが2023年の頭なので、だいたい4年目ですね。


酒井:
お店は区の公共施設内のスペースを使用していますよね。一体どういう経緯でオープンが決まったのでしょうか?

小田桐さん:
2019年頃から池上エリアのリノベーションプロジェクトにお声掛けいただいて、「SANDO」というスペースを営んでいたんですね。その後「SANDO」の終了に伴い、新たに池上会館で何かお店ができないかとご相談を受けたことがオープンのきっかけになりました。


酒井:
行政の方との密接な連携があってのお店作りだったんですね。ちなみに、「Try Many Times Club」という店名の由来はどのようなものなのでしょうか?

小田桐さん:
読んだ通り、コンセプトそのままの店名にしました。様々な人が何かを始められるきっかけとなるような場所となるように、「なんでもトライしてみよう、何度でもしてみようよ」というメッセージを込めました。
もちろん主となるのはカフェですが、他方でリソグラフで印刷ができるスタジオがあったり、フード事業などを始めたい方にも気軽に利用できるようなシェアキッチンを用意したりと、様々な機能を場に持たせています。

酒井:
なるほど。訪れるお客さんやスタッフの方が、自然と創作をしたり、アート作品の近くでゆっくり会話できる。そういう場の雰囲気が素敵なだと思います。

小田桐さんの歩み


酒井:
小田桐さんのこれまでの歩みについても聞いてみたいと思います。まずはじめに、ご出身はどちらでしょうか?

小田桐さん:
出身は青森県の(現)平川市ですね。弘前市の隣です。大学からは静岡県浜松市に住みはじめました。

酒井:
第一歩目として、大学のご友人とお店づくりから始めたと聞きました。


小田桐さん:
そうですね。大学の同級生だった中嶋哲矢とL PACK. (エルパック)というアーティストユニットを組みまして、それから彼とは20年近くずっと一緒に活動を続けています。

酒井:
専攻は何でしたか?

小田桐さん:
「空間造形学科」という建築系の専攻でしたね。でも当時は2人とも就職に対してそれほど乗り気ではなくて(笑) 代わりに、「コーヒーのある風景」を作り出すような活動をはじめたんですね。

酒井:
そこでユニットを組まれて、道が広がっていったわけですね。


小田桐さん:
そうですね。それと、大学の近所に素敵なレストランがあって、2人でよく通っていたんですよ。そこのお店を営んでいるおじさんと話したことや、教わったことも自分にとっては大きい糧になっていますね。
まだ「リノベーション」という概念も全く浸透していなかった頃の話ですが、お店では「建てる建築家だけじゃなくて、使う建築家も必要なんじゃないか」っていうようなニュアンスの会話をしていたことをよく覚えています。そういう思い出も、今に繋がる一つの出発点にはなっているんじゃないかと思いますね。

酒井:
中嶋さんと始めたL PACK.では、どのような活動をされてきたんでしょうか?

小田桐さん:
大学を卒業後、横浜を拠点に活動するようになりました。黄金町・日ノ出町エリアでスタジオを持ったり、古い旅館だった建物を「竜宮美術旅館」という名前で人が集まれるスペースとして運営したり。
その後、八反橋で「DAILY SUPPLY SSS」というお店を開きました。


酒井:
八反橋は一度お店に伺ったことがあるのですが、その時の衝撃は忘れられないですね(笑) 「こんな駅からも遠い、畑の中におしゃれな雑貨店があるなんて」という。

小田桐さん:
(最寄りの)片倉町駅から歩いても、一山越えて20分ぐらいかかりましたからね(笑)
その当時は、人が大勢いる場所よりは、わざわざ行かないと来れないような場所の方が面白いかもしれないよね、と思ったんです。


酒井:
それから池上に移られてきたんですよね。

小田桐さん:
はい。先ほど少し話したように、その頃に東急株式会社さんと大田区のまちづくりに関する協定が結ばれて、池上をモデル地区としたエリアリノベーション事業が始まったんです。
その事業にお声掛けいただいたことをきっかけに、2019年ごろから池上で活動するようになりました。八反橋にあった「DAILY SUPPLY SSS」もこちらに移転しています。その辺りから、現在の生活に繋がっていったという感じですね。
ヴェネチアで「おでん」をつくる


酒井:
L PACK.の最近の活動についてもお話を聞いてみたいです。なんでも、2025年はイタリアに行かれていたとか…。

小田桐さん:
世界で一番古い芸術祭とされる「ヴェネチア・ビエンナーレ」の関連企画に招聘されて、そこでおでんを作ってきたんです。

酒井:
水の都ヴェネチアで、おでん…! 全く想像がつかないです(笑)

小田桐さん:
そうですよね(笑) 元々、L PACK.の活動で、彫刻おでん屋台「LA」という作品がありまして。これは彫刻家が製作したシリコン型を使って、アート作品としての練り物を作るというプロジェクトなんですよ。
その作品があったので、ビエンナーレのオープニングで「彫刻おでん」を出してほしいという依頼を受けることになったんですね。


酒井:
なるほど。…ということは、おでん種は現地調達ですか?

小田桐さん:
そうなんです。黒はんぺん、白はんぺん、生麩、こんにゃくなどの練り物類を現地で作りました。
現地に着いたら、まず市場やスーパーに仕入れに行って。白身魚や青魚を買って、レジデンス先で捌く。こんにゃく粉は日本から持ち込みました。出汁もしっかりとって、会場でおでんとして振る舞いました。

酒井:
誰も経験したことのないようなことをされていますね…!とても興味深いです。

小田桐さん:
そうですね。滞在期間は1週間ほどでしたが、とても良い思い出になりましたね。
後編では、Try Many Times Clubから見える景色や、そして小田桐さんが今取り組まれている渋谷の新プロジェクトまでを深掘りしていきます。お楽しみに〜!
Try Many Times Club
- 住所
- 東京都大田区池上1丁目32-8 大田区立池上会館 1F
- WEB
- https://trymanytimes.club
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