~前編はこちら~
安達さんの一日
作家さんの一日とは⁈
- 朝
- 5時頃起床。朝ご飯を食べたり、シャワーを浴びたり、ゴミ出しに行ったり
- コーヒーは豆工房さん、テラコーヒーさん、読者の方から頂いたものなど
- 6時頃
- 始業 午前中が一番能率があがる時間なので集中して執筆
- 12時
- お昼ご飯
- 午後
- 気分転換も兼ねてカフェに移動、執筆や制作
- 21時
- 帰宅し、晩ご飯
妙蓮寺のお気に入りスポット
中岡さん:
引越しをしてからいろんな人との出会いがあって、いろんなところにも行きましたよね。
妙蓮寺でお気に入りの場所はありますか?
安達さん:
私はもう断然プールです!(笑)
菊名池公園にあって、夏の間だけ流れるプールがオープンするんですけど、去年ついに水着を買って、子ども達に混ざって何度も行きました。
9月になった秋のプールはまだ暑さもあるけど、秋の空なんですよね。そこにプカーって浮いて、雲が綺麗だなぁって感じていましたね。
安達さん:
水着は家で着ていって上からワンピースを着て、完全に小学生と同じスタイルで(笑)
どんなに忙しい時も、朝1時間だけでも行ってました。
友達とプールで直接待ち合わせて、上がったあとはドライヤーが設置されていないから、びしょびしょのまま生活綴方に行く、みたいなことができる街ですよね(笑)
『ケ』が生き生きとしているまち
中岡さん:
例えばそれが吉祥寺だったら、ちょっと人の目が気になるもんね(笑)
妙蓮寺ならどんな格好で歩いていても、何も気にする必要がないし、かといって本当に生活だけに特化している街でもなくて、妙蓮寺の『ケ』の尊さは僕も享受しているなぁ。
安達さん:
妙蓮寺は生活が濃いですよね。
生活とは何かと考えた時に、5月の節句に柏餅を買いに行くとか、菖蒲を持ち帰って家に飾るかとか、お正月に美味しいあんこを食べたくなって並ぶとか、そういうことだと思うんですよ。
安達さん:
ずっと忙しい生活をしていたんですけど、妙蓮寺に引っ越してきて、時間の流れがゆっくりしているというのはすごく感じていて。
妙蓮寺は『ハレ』と『ケ』の淡いワンダーランドだなぁと思うんですよね。
『ケ』が生き生きしているんです。
中岡さん:
みんな『ハレ』を求めがちで、『ケ』は暗い・冷たい・静かとかネガティブに思っている人が多いですよね。
でも『ケ』が楽しくて充実していて明るかったら、わざわざお金をかけて『ハレ』を求めなくてもいいと思うんです。
安達さん:
私にとって『ケ』は、例えば家に寝に帰るだけみたいな認識でした。
よく建物が工事で取り壊されたのに、以前はここに何があったか1ミリも覚えてないことが、10年住んでいた街でもあったんですけど、妙蓮寺はそういう取り換え可能な感じの『ケ』ではないですよね。
みんな場所に親しみを持っていて、『○○さんのところに行こう』と固有名詞で呼ぶことも多くて。
自分の住んでいる街が生き生きしてるっていうのは、すごく居心地が良いです。
ただそうは言っても、みんなが電車にも乗らず、ずっと妙蓮寺に留まっている訳でもなくて、朝になると電車に乗って都会に出かけていく。
ちょっと早く帰って来れた時に、和菓子に並んだり、菖蒲を持って帰ったり、本屋さんで楽しそうに集ったり、人が交わる。
通勤のために住んでいる人も多いのですが、都内に通勤してる生活が自分のすべてじゃないというのが、感じられる場所だなって。
そういうところが妙蓮寺の『ハレ』と『ケ』の淡い部分だなと思います。
『妙蓮寺』という街が持つ特性
安達さん:
ここ2・3年ぐらい住んでいて、妙蓮寺に引越してくる方が多いなぁと感じるんです。
もともと都内や遠くの実家に住んでいたけれど、妙蓮寺に通うようになって、だんだん楽しくなってきて、この近くに引越してくるという流れが、すごく増えていて。
しかもそういう方たちって、文章を書いてみたり、自分の本を作ってみたり、サイドプロジェクトを始めるんですよ。
それって、今までの人生と新しい人生が交わって、『こんなこともできるんだ』って、ちょっと開かれていくというか。
そういうのは本当にこの街が持つ特性なのかなって思いました。
安達さん:
私は中岡さんにおすすめ物件のURLを沢山送ってもらって(笑)
その話を友達にしたら『ウェルカムなコミュニティがある場所に引越しができるなんて、それは本当に幸運なことだよ』って言ってもらえました。
中岡さん:
会社に通いやすいかどうかで、住む街を選ぶ人が多いですよね。
安達さん:
あと妙蓮寺は歩いたり自転車を使えば、白楽・東白楽・反町・東神奈川・新横浜あたりは気軽に行けて、新幹線へのアクセスも良いし、素敵なお店も多いんですよね。
なおかつ家賃も手頃なのが良いところかなと
中岡さん:
よく綴方に来てくれる人に、『じゃあ、ちょっと一緒にどっか行きましょうよ』って、菊名池公園や、白楽など、結構遠くまでお散歩に誘うんです。
人に連れて行ってもらったり、その人の目線で見たりすると、新しい発見をしてもらえることもあって。
そうすると、安達さんのように『ここに住む』という選択肢を選ぶ方もいるんですよね。
安達さん:
そうですね。様々な作品が生まれて、作家として人生を歩むことになったのも妙蓮寺の街に住むという選択をしたおかげかもしれませんね。
中岡さん、安達さん、ありがとうございました!
<credit>
取材・文/酒井洋輔
撮影/鈴木安佳音
取材協力/本屋・生活綴方
編集後記
安達さんと初めてお会いしたのは2021年。
三輪舎の中岡さんから 「妙蓮寺に引越ししたいアーティストがいるんだけど…」 ということで、ご紹介いただきました。
内見当日なかなかピンとくるお部屋がなく、あきらめかけた時にふと出てきたお部屋だったんですが、安達さんが窓を開けた時に、フワッと港からの風がお部屋の中に入ってきた瞬間を憶えています。
その後、安達さんはこの”妙蓮寺郊外のお部屋”で、「私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE」を執筆され、人気作家さんへと駆け上っていきました。
(この辺りの経緯は、安達さんの「私の生活改善運動」に掲載されています)
妙蓮寺に来た時の安達さんは、羽をやすめている時期のように見えましたが、妙蓮寺の街や、生活綴方のゆるい繋がりが“苗床”となり、安達さんが持っていた才能のタネが一気に芽を出し、花を咲かせたように見えました。
2024年、安達さんは以前からの夢だった「海辺の町に住む」という夢をかなえるため、鎌倉へと引越されましたが、妙蓮寺は名作『私の生活改善運動』が生み出された街として本と一緒に記憶に残っていくこと、とても嬉しく思っています。
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