会社員とカフェオーナー 2足のわらじ〈白楽 稲増 祐希〉(後編)

お店とケのまち

プロフィール

稲増祐希

通称「にゃらさん」1988年、神奈川県生まれ。明治大学農学部卒業。 平日はIT企業の広報担当として働きながら、週末は白楽のCafe 酒「にゃらや」のオーナー兼店主としてお店に立っている。

前編こちらから

白楽でお店を開いた理由

酒井:

ずっと西荻窪でやっていて、なぜ白楽でお店を開こうと思ったんですか?

にゃらさん:

最初は一人暮らしをしようかなと思って住む場所を探していたら、いつの間にか店舗物件を探していました。

コロナで休んでいる間も、ずっと何かやりたいな…と思っていたんですよね。

でも、なかなか良い物件が見つからなくて…

やっと気になるところが3つだけ見つかって、たまたま内見のタイミングがあったのが、この店舗だったんです。

そして見に行った時に『なんかいいな…』って直感で思ったんですよね。

でも、いざ契約するとなると、不安でまた悩んでしまって…

にゃらさん手書きの看板

にゃらさん:

そんな時に親に相談したら『一緒に見に行こう!』と言ってくれて、一緒に見に来てくれたんです。

そしたら

『この場所とてもいいね! いいじゃん! やりなよ!』

と背中を押してくれて、その後押しのおかげで決められましたね。

酒井:

すごいですね!(笑)

普通は、娘が自分で商売やろうとするのを止めそうな気がしますけど、やっぱり商売人の血筋なんですね。

のれんがあるけど、カフェなんです

にゃらさん:

はい、そうかも知れません。

でも物件は決められたんですけど、普通の家を借りるのと違うので勝手がわからなくて…

不動産屋さんから『どういう風に改装したいか図面を持ってきて』と言われて、

困っていた時に、ネットで物件の隣駅にある松栄さんを見つけて、連絡して相談に行ったんですよね。

酒井:

そうそう、『他社で借りるんだけど相談したい』って、うちに連絡をくれたんですよね(笑)

でも私たちも、なにか面白いことをやりそうな人だなと思って、色々アドバイスさせて頂きました。

にゃらさん:

あとは以前働いていたカフェのオーナーさんにも相談をさせてもらって、設計士さんを紹介してもらいました。

そして図面を出してもらって、大家さんのOKを頂いて、契約して…という感じで、なんとか進んでいきました。

酒井:

内装はDIYでやった部分も多いんですよね?

にゃらさん:

そうですね、壁塗りやタイル貼りは友達に手伝ってもらって自分たちでやりましたね。

配管は父にやってもらって、椅子などは自分で買って来ました。

のれんは母の知り合いに作ってもらったり、このお店は色んなご縁で出来ています

実家にあったというランプ
カウンターの椅子
自身で貼ったタイル

にゃらや、オープン!

酒井:

お店をオープンして、どうでしたか??

にゃらさん:

2021年9月18日にオープンしたのですが、オープンしたばかりのときは知り合いがお祝いで来てくれました。

その中に近所の人が混ざって来てくださったりしましたね。

夕方になると、看板のあかりが灯ります

にゃらさん:

でも当初は緊急事態宣言中で、お酒は出せなかったので、コーヒーを注文される方が多かったんです。

その後、緊急事態宣言が終わって、お酒が飲めるようになったらお客様の流れも変わって、ご来店くださる方が増えましたね。

集客も自分でもっとちゃんとやらないといけないのですが、準備で手が回らないことも多くて、周りの人がSNSなどに書いてくれて、それを見て来てくれる人も多いので助かっています。

最初は土日だけしか営業しないし赤字覚悟でしたが、お店を続けていくために必要な『これだけは稼がないと』という目標は達成できていて…日々お店に来てくださるお客様に感謝しています。

にゃらコイン

酒井:

オープン当初から混んでいるのは凄いですね~
そういえばお店のコイン(通貨)がありましたよね?

にゃらさん:

『にゃらコイン』ですね。すごく機能してくれてます!

にゃらさん手作りの、にゃらコイン

にゃらさん:

4枚を1,000円で購入して頂いて、2枚で飲み物1杯、おつまみは1枚から食べられるものを用意しています。
 
価格はコインを買った方が少しお得になるよう、設定しているんです。

ケーキはにゃらコイン2枚

にゃらさん:

お釣りのやり取りがないことも良いですし、よくいらっしゃる方は残ったからコインキープしておいてということもありますよ。

酒井:

次の来店動機にもなりますしね。

にゃらさん:

そうなんです。財布ににゃらコインがあったから来たとか、粋な方は、最後1枚余ったコインを投げ銭してくれたり。

現金だと投げ銭って難しいけど、こういうモノになると人にあげやすいのかもしれませんね

酒井:

開店前に相談に来てくれた時、ペイ・フォワードの話をされていたのを、よく覚えています。誰かが誰かに送るようなモノにしたいって

にゃらさん:

そういう粋な使い方をして頂けたら良いなと思っています。

料理とお酒のこだわり

酒井:

カフェやお酒、お料理でこだわっている点は?

シングルオリジンコーヒー 器もかわいい

にゃらさん:

コーヒーは、シングルオリジンで、知り合いに少量ずつ焙煎してもらっています。

日本酒は火入れしていない生酒が好きで割合が多いですね。

好みに合わせられるように何種類かを置いていて、来るたびに違う日本酒があるようにしています。

酒屋さんに行って試飲し、なるべく状態が変わらない、良い造りのものを入れています。

おちょこもカワイイ

にゃらさん:

あと器はなるべく和風にして、ホッとするような、あまり「おしゃれなカフェ」という感じではないようにしています。

両親は『ゴハンは良い器で食べたほうが良い』という考え方で、割ってもいいからと小さい頃から陶器やガラスの器を使っていました。

にゃらやには、実家にあった器もいくつか持ってきましたね。

酒井:

いま現在の働き方としては、週5で会社員をやっていると思うのですが、仕込みはいつやっているんですか?

にゃらさん:

金曜の夜に買出しをして、金曜の夜と、土曜の開店時間の15時前まで仕込みをやっています。

お客様からは『15時から飲めるのが良いよね』と言われたりします。

毎週末、15時オープン

にゃらさん:

お料理は独学で学んだのですが、飲み屋のつまみというよりも、家庭料理のようなものを意識しているので、

若い人にはレトロ、中高年の方たちにはちょっと新しいと感じていただけているみたいです。

お料理は全てにゃらさんの手作り
レトロなオレンジジュース

にゃらさん:

ハイボール飲んで、おつまみを食べて、締めにケーキという方もいらっしゃいますね。

お酒が弱い編集長は、夜パフェ利用派

にゃらさん:

お店は15時に開店しますが、他の飲食店が開く17時位に一回落ち着いて、その後また沢山お越し頂いて、終わりは22時までに来て頂ければ、滑り込みOKにしています。

酒井:

すごいなぁ… 週5日働いて、そのまま仕込みやって休み無しで働くって…超人ですね。

でも社会人になってからもWワークがずっと当たり前だったんですもんね。

にゃらさん:

そうなんです。

会社員をやめる理由もないし、お店も会社員やってるからって、やらない理由もないと思っているんです。

 
会社員をやっているおかげで学べることもあり、毎月きまった収入がありますし、

お店をやっているおかげで、会社員では知り合えないような人たちとつながることが出来ますしね。

 
昨日もお客さんと深夜まで飲んでたり、楽しくやっていますよ。毎週仕込みは大変ですけど(笑)

今後もゲストで他の方に店長をやってもらったり、コース料理やちょい飲みで場所を貸したりなど、様々なことに挑戦していきたいですね!

酒井:

にゃらさん、ありがとうございました!私もにゃらコインをキープしてきました!

編集後記

毎週ほぼ休みなしの超ハードワークなのに気負いは一切なく、「たのしいからやってます」なんて、サラッと話すにゃらさん。

お店に集まるお客さんは、そんなにゃらさんの人柄にも居心地の良さを感じているんだなぁ、なんて感じた取材でした。

窓際編集長も取材後、お店の常連さんとにゃらさんと白楽の街に飲みに行ったのですが、気がついいたら深夜でした。

カフェ、BAR、小料理屋などの良いところが集まったお店なので、皆さんも是非訪れてみてください。

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この記事を書いた人

酒井洋輔

酒井洋輔

編集長
くらしとすまいの松栄三代目。妙蓮寺生まれ・妙蓮寺育ち(悪そうな人は友達ではない)農業を参考に、不動産と建築、街づくりが循環し、持続可能な形で成長するビジネスモデルを探求中。

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