本と出会える小さなアジール『bookpond』(後編)

お店とケのまち

前編はこちら

インタビュアー:酒井 洋輔
(ケの日のこのまち編集長 くらしとすまいの松栄三代目)

多様な価値観が交わる選書

bookpondでは、およそ1200冊以上の本が売られています。人文書から小説、エッセイ、実用書、アートブックや絵本まで。小池さんの確かなセレクトで選ばれた一冊一冊が、訪れる人の好奇心を刺激します。

酒井:

幅広いジャンルの本を取り揃えていますが、どういう軸で本を選んでいますか?

小池さん:

「少しだけ世界の見え方を変えてくれるような本」を置くように心がけていますね。

もともと、哲学や社会学などの人文系の本が好きで、僕自身も本を通じて出会った言葉に励まされてきた経験もあります。

酒井:

「哲学」と聞くと身構えてしまいそうですが、ここには手に取りたくなるようなテーマの本もたくさんありますよね。

小池さん:

はい。哲学や社会学って、一見すると「難しそう」「とっつきにくい」と思われるかもしれません。でも、生活の中で感じるちょっとした疑問や、日々の生きづらさに応えてくれるような本もたくさんあるんですよ。

bookpondではそういう本をたくさん置いているので、ぜひ見に来てほしいなと思っています。

酒井:

なるほど~。小池さんならではの、手に取りたくなる本がたくさんあって面白いです。絵本や漫画を置いているのも、ちょっと意外な感じがしますね。

小池さん:

はい。いまのところ一人でお店を営んでいるので限界はあるのですが、できるだけ白楽という街に開かれた書店として、お子様連れのご家族にも気軽に来てもらいたくて。

先日も、小さなお子様に本をご購入いただいたのが嬉しかったですし、生まれたばかりの赤ちゃんを連れた方がきてくださることもあります(授乳室としてお使いいただける個室もあります)。

逆に90歳近いおじいさんの常連さんもいらっしゃいますし、色々な方がお店で一息つけるような時間を過ごしてもらえたらいいなと思いますね。

その他、カルチャー系のZINEなど、来た人がわくわくするような選書にも心を配っています。

喫茶・喫酒のこだわりメニュー

選りすぐりの喫茶メニューはもちろん、通好みの酒の提供があるのもbookpondのユニークなポイント。上質なドリンクを片手に、景色の良い一人席でゆっくり読書を楽しむこともできます。

酒井:

カフェとしてのbookpondの魅力についても教えてください。メニュー表の熱量がすごいですよね。

それぞれのドリンクにまつわるバックストーリーが綴られた「読ませる」メニュー表は必見

小池さん:

ありがとうございます。ここ数年、編集の仕事の方で「食」に関わる機会が増えていて、色々な視点で素敵だなと思う農家や作り手と出会ってきたんです。

だから、ドリンクやフードについても、日常の中のちょっとした出会いや発見をもたらすメニューを揃えました。

酒井:

本を丁寧にセレクトするように、食のメニューにも想いがこもっているんですね。提供しているお酒も個性的です。

小池さん:

そうですね。例えば、「草木酒」という森の素材で香りづけしたジンなど、これまでに取材してきたなかでも素敵だな、唯一無二だなと思うものを選んでいます。

白楽の魅力を外の人にも知ってほしくて、このエリアに縁のあるドリンクも揃えています。「254 BeeR」が醸造しているクラフトビールなど、この街ならではの味も楽しんでほしいなと思いますね。

酒井:

先ほどいただいたホットコーヒーも美味しかったです。

小池さん:

コーヒーに関しては「ブックカフェはるや」さんの味を受け継ぎたくて、「はるや」さんが仕入れていた武蔵小山のコーヒーショップ「Amameria Espresso」の焙煎豆を使っています。

酒井:

どのメニューにも、バックストーリーがあるのが素敵ですね。

「食」をめぐるトピックでは、小池さんも思いがけず饒舌に

日常のアジールをつくりたい

小池さんが目指しているのは「日常の中のちょっとしたアジール(=避難場所)」となるようなお店づくりなのだそう。

さまざまな価値観が交わる場を目指して、作家や批評家、街の多様な人々が集うトークイベントや読書会なども開催されています。

酒井:

オープン時から積極的にイベントを開催されていると思うんですが、反響はいかがでしょうか。

小池さん:

ありがたいことに、色々な方から注目していただいています。

つい先日も「お店」をテーマとしたイベントを開催しました。哲学者の方やデザイナーの方、設計士の方をお呼びして、さらには白楽でお店を経営されている方もたくさん来てくれました。

酒井:

ローカルに根付きながら、新しい価値観を呼び込むイベントができるのも、ひとえに小池さんの企画力のなせる技じゃないかと思います。

小池さん:

そう言っていただけるのは嬉しいですね。

僕自身、住み慣れた白楽への愛着はすごくあって。この店が、白楽と外の世界とを接続するハブみたいな場所になったらいいな、と思っています。

酒井:

これからbookpondをどんなお店にしていきたいですか?

小池さん:

このお店が、皆さんにとっての小さなアジールのような存在になったらいいなと思っています。

美味しいコーヒーも、楽しいお酒もありますので、まずはこの景色を楽しみに、気軽にドアを開いてみてほしいですね。

bookpond

住所
横浜市神奈川区白楽103 松尾白楽第二ビル 2階
Instagram
https://www.instagram.com/bookpond_hakuraku/

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この記事を書いた人

石垣 慧

石垣 慧

91年生まれの妙蓮寺在住。「出版社ビーコン」を主宰するほか、編集者として、また文筆家・校正者としても幅広く活動中。

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