プロフィール

小島親
1989年、東京都豊島区生まれ。高校卒業後就職した靴の販売店にて、ブーツの魅力に取りつかれ、職人の道へ。2023年から自身のブランド『Aristocrat(アリストクラット)』を立ち上げ、白楽のアトリエにて対面のみで販売を行っている。靴のサイズは26.0cm。
前編はこちらから
ネット通販はしない。対面での販売への強い想い

酒井:
どういうスタイルで靴を販売されているのでしょうか?

小島さん:
売り方的なことで言うと、職人時代、表にも立っていたところから、どんどん裏方だけになってしまった時に、誰に作っているかわからないとか、作ったものを渡したときに感想を聞けないのは、ちょっと寂しいなと思って。
時間も手間もかけて作っているので、ご来店いただいて、対面で直接販売したいなと。
本当に時代に合ってない売り方をしているんですけど、でも本来の商売の原点かなと思っているので。
あとは人で買ってもらいたいというのもあります。今はネットで買って、合わなかったらフリマサービスで売っちゃおうという時代。
作り手としては、なんか寂しいじゃないですか(笑)だからそれの真逆にいこうと思って。


酒井:
お店のホームページを見ても、ネットショップは全部”売り切れ”がついてて(笑)来ないと買えないお店なんだな、と。

小島さん:
そうそう(笑)だから、お客さんからしたらすごい不便だと思うんですけど、ただ、ここに来る人って『欲しい』という気持ちが強い人しかいらっしゃらないので、なんかやっていて気持ちが良いんですよね。
同じ価値観というか、話も合うし、楽しい。
今の時代、転売とかもあって、欲しくても買えないとか、本当に欲しい人に届かないとかもありますが、それが嫌なので、本当に欲しい人だけに届けるためにこういうスタイルでやっています。


酒井:
人気が出てくると支店出店のお誘いが来ると思いますが、心を込めて目の前のお客さんに自分の商品を渡したい、という気持ちを持ったお店の方がケのまち界隈には多くいらっしゃって、それはわかる気がします。

小島さん:
そうですね。だから卸とかもやっていないです。海外とかも含め、全部断ってます。
見てもいないのに、売れそうだからって声かけてくるところもたくさんあって、「それはちょっとな」と。
実際に来て、本当にその人が『この靴が好きで、売りたい』っていう熱意があって、ちゃんと評価してくれて、ちゃんと販売してもらえるところだったら、僕もちょっと考えるんですけど…。
今は、国内では受注会という形で、僕の靴を持って行って、そのお店でオーダー会みたいなものはやっていますが、見る機会もこのアトリエか、僕が行ったところでしか見れないです。
刺さる人に刺されば良いかなと思っているので。


酒井:
ネットショップをやらないことは怖くはなかったんですか?

小島さん:
いや、怖かったですよ。怖かったですけど、自信もありました。
白楽を、この場所を選んだ理由

酒井:
地元は東京とのことですが、そもそもこちらにアトリエを作られた経緯というのは?

小島さん:
経緯は、本当たまたまで(笑)
独立するタイミングで、作業場という名目で物件を探してたんですよ。でも、今住んでいる家の近くでは全然出てこなくて。
不動産屋さんとエリアを広げましょうって話したら、二か所出てきたんですよね。
それを見た瞬間に、なんか、こっち良いかもと思って、見てもいないんですけど、ほぼ決めてたんですよ、なんか直感で。僕と同い年で、月まで一緒だったんで、なんかこれ良いじゃんと思って。
あとは、1回白楽に来たことがあって、あ~ここか!みたいな。ぱっと見で決めちゃったという感じで、ここで良いですって即決で。
それで、作業場だけでは広すぎるなと思って、こういう風にしました。


酒井:
じゃあ本当に、縁もゆかりもないところだったんですね。

小島さん:
はい。もう全くないです(笑)
本当になんか、ピンと来たというか。大通り沿いで、日当たりもすごい良いし。
あと、都内は嫌で、ちょっとローカルなところに出したくて。隠れ家チックなというか、やり方的にもその方がマッチするなっていうのがありました。
そもそも人混みが苦手で、ちょっと静かなところとかの方が、肌感的に良かったのかなと。
なんか白楽めちゃくちゃ良いですよね。ご飯もおいしいし、人もあったかいし。ここの場所すごく合ってます。僕はすごい好きです。

酒井:
そう言ってもらえると嬉しいです。



酒井:
お客様で一番遠くからいらっしゃった方って、どのあたりからでしょうか。

小島さん:
北海道?いや、アメリカか!ニューヨークにいらっしゃる方で。すごいかっこいい方だったなあ。

酒井:
すごいですね!白楽から、ワールドワイドですね!

小島さんの1日
- 6:00頃
- 起床
- 7:00頃
- ジムでトレーニング
- 8:30頃
- 帰宅してシャワー
- 10:00~11:00頃
- 出勤
- 14:00
- アトリエオープン
- 19:00
- アトリエクローズ
- 20:00~21:00頃
- 帰宅の途につく
- その後、自宅にて晩ご飯を食べて、就寝

制作仲間の石井さんから見た小島さん

酒井:
そちらでミシンをされている方は?

小島さん:
もともと前の会社で一緒に働いていて、その後それぞれ違う道に行ったんですが、同じタイミングで独立して。
ミシン系の作業がすごく上手で信頼していて、週に1回くらい手伝ってもらっています。石井さんです。


石井さん:
小島さんが良いなって思うのは、対面販売でお客様の顔がわかってるから、作ってる時に完成に近づいてくると、
「○○さんこれ絶対喜ぶわ~」って毎回言うんですよ。

小島さん:
そんなこと言ってる?恥ずかしいな(笑)

石井さん:
僕は普段接客はしないので、名前を聞いても顔はわからないですけど、小島さんは同じデザインで同じ黒の革でも、「これが○○さん」、「これが△△さん」って全部把握しているんです。
このスタイルだから皆様の顔が見えて、心を込めた靴づくりができるんだろうなと。

個人だからこそできること。これからの時代

酒井:
お店をやっていてよかったと思う瞬間はありますか?

小島さん:
来た人にどこからですか?と毎回聞くんですけど、徐々に浸透している感じで。
最初はもともと付き合いのある方が多かったんですけど、遠いところから3,4時間かかってきましたとか、楽しみでわざわざ来てくれて。
その瞬間がめちゃくちゃ嬉しいというのがまず1個と、あとは渡した時が一番嬉しいですかね。
喜んでいる顔とか、オーダーしてよかったなという顔を見れるのがやっていて楽しいし、嬉しいなって。


酒井:
これまでも他の方に、独立までのお話をお聞きすることがありましたが、ネット通販を一切やらないというストロングスタイルはやっぱりすごいなと思って。でも突き抜けている人の方がこれから活躍しそうですよね。

小島さん:
そうですね、逆にその時代が来ると思ってて。
ブームとかって回ってくるじゃないですか。みんな多分もう飽き飽きしてると思うんですよ。
だからこういうやり方が刺さる時代がまた戻ってくるんじゃないかな、と。
やっぱ”人の時代“というか。


酒井:
そうですよね。僕もその時代が来ると思って、個人店をなるべく掘り起こしたいと思ってます。

小島さん:
個人だからこそできるものとかも絶対ある。
チェーン展開だと、ここのお店の店員さんは良いけど、あっちはダメだっていうのがありますけど、個人だとそれがないので。
あとは人もそうですけど、本当はできるのに会社的にできないとか。こうやった方が絶対に良いのになっていうのをすごい感じて、それが今のお店に詰まってます。

酒井:
1店舗でやられていると、全部自分の目で見られて、納得いくものが手渡しでできるというのはすごく良いスタイルですね。


酒井:
最後にお伝えしたいことがあったら。

小島さん:
この記事をきっかけに知ってもらえたら嬉しいかなと思います。
白楽にこういう店があるんだよっていうのを少しでも知ってもらえるだけでありがたいかなと思います。

編集後記
とても気さくだけど、内にあるのは自分が作る靴への自信と強い愛。小島さんは、来てくださる方の想いに、靴づくりで真摯に応えてくれるでしょう。小島さんが語る想いの端々からは、販売自体を目的としているのではなく、まるで、共感し、一緒に走ってくれる仲間を探したい、そんな風に思っているように感じました。
これからの時代、先行きは見えないけれど、きっと変わらずにいてくれる。そう思わせてくれる小島さんの生き様、かっこいいなと思います。
この記事をきっかけに、ぜひアリストクラットで会って話して、オーダーして。そんな方が少しでもいると嬉しいです。小島さんはきっと全力で応えてくれます。
Aristocrat&Co.
- 住所
- 横浜市神奈川区六角橋1-32-2 國武ビル1階
- アクセス
- 東横線白楽駅 徒歩6分/横浜市営地下鉄ブルーライン岸根公園駅 徒歩11分/横浜市営バス神橋小学校前 徒歩1分
- 営業時間
- 平日 14:00~19:00(水曜日定休)、土日祝 13:00~18:00
- ホームページ
- https://aristocrattokyo.myshopify.com/
- https://www.instagram.com/aristocratandco/
<credit>
文/池田 美帆
撮影編集/松本瑞生
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