想いをお皿に乗せて『菊名/野菜レストランさいとう』(前編)

お店とケのまち

菊名駅から徒歩3分、菊名神社から徒歩1分のところにある『野菜レストランさいとう』さん。

野菜が大好きなシェフの齊藤良治(サイトウ ヨシハル)さんに沢山お話を伺ってきました!

シェフの齊藤さん。

出版業界から料理人への転身

酒井:

よろしくお願いいたします!
まずはこの地とのご縁・つながりについて教えてくだい。

齊藤さん:

2005年の5月にサミットの近くのテナント1階でオープンして10年、
今は父が管理している、ご先祖様が農家をやっていた土地に移転して10年、
早いもので今年20周年になります。

酒井:

お店を立ち上げた経緯は?

齊藤さん:

大学を出てから飲食とは全く関係のない出版社に勤めていましたが、10年経ったころ身体を壊して、食の大切さに気付いたのがきっかけで飲食を始めました。

出版社時代に趣味で料理はやっていましたが仕事とは別物でした。

食には人生を変えてしまうほどのパワーがありますね。

店内は自然光豊かで明るく、温かいイメージのインテリアでまとまっています

酒井:

身体を壊した時に、食生活がガラッと変わったんですか?

齊藤さん:

出版社時代は夜遅くまでデスクワークだったので、コンビニのおにぎりなどで済ませていて、食べることがやっつけみたいになってて、バランスのいい食事なんて一切できなかったんです。

そんな中、ストレスで身体も病んでしまい、味覚障害のような感じで、“美味しく食べる”という習慣が、人生から抜けてしまっていました。
身体もあまりに辛くなって、血液検査をしたら肝機能の数値が入院レベルで、胃潰瘍一歩手前までいってました。

幸いにも薬で病気が治ったので入院は避けられたのですが、身体が良くなったら味覚がとても敏感になってて、人工甘味料、保存料などの味が気になるようになり、いつも食べていたお菓子が食べられなくなってしまいました。

酒井:

そこから野菜を中心にした食生活に変えられたのでしょうか?

齊藤さん:

療養中に朝食で出てきた、父が作った家庭菜園の朝採れきゅうりがめちゃくちゃ旨かったんです。
びっくりするほど美味しくて、細胞まで旨さが伝わる幸せを感じました。
その感動を人に伝えたくて、飲食を始めました。

酒井:

30代になって、初めて飲食を始められたんですね。

齊藤さん:

33歳で脱サラして、右も左もわからないままで、まずはエコール辻のフランス料理専攻科に入学しました。

春に入学したのですが、周りは10代の子も多く意識の違いなどもあって、基礎を学べる前期だけ受け、その夏には学校をやめました。

酒井:

その後はどんな活動を?

齊藤さん:

自分が納得いくお店で修行したかったので、学校をやめてから食べ歩きをしていました。

料理人の心意気が伝わってくるようなお店に関内で出会い、2回食事に伺った後に「採用の空きがないか」と聞いてみたのですが空きはなく、シェフも33歳の人が申し出るとは想像してなかったでしょうし、お店も若い人たちで回していたので、採用したくない雰囲気は感じていました。

酒井:

飲食業に携わる人は若いイメージがありますよね。

齊藤さん:

それでも諦めずにお願いしていたら

じゃあバイトにでも来るか?
ということになって、学校をやめた年の夏からバイトとして数日行きました。

ただ、そこで就職できる保証はないので、前職の出版業界のアルバイトも行っていました。
家庭もあって子供もいる身だったので先行きの不安はありましたね。

酒井:

私も家庭があるので、その気持ちわかります。

齊藤さん:

そんな時、突然シェフから電話がかかってきて

「パティシエがケガしたから来る?」

っていう軽い感じで誘われ、「行くしかない!」と思って2日後にパティシエとして働き始めました。

パティシエは料理人の登竜門で、その後は前菜、メインの順で任されるのですが、パティシエ以外のポジションに空きが出なさそうだったのもあり、1年8ヶ月経った頃に独立を考えました

学校辞めてからはパティシエの経験しかないので、今考えれば独立は無謀だったと思います(笑)

酒井:

最初はご苦労があったのでは?

齊藤さん:

当たり前ですよ(笑)
経験が少ないのでメイン・前菜も自分の知識をフルに使ってやらざるを得ないじゃないですか。

行き当たりばったりだったので、仕込みなどが夜中までかかってしまい、家庭のこともできないし、必死でしたね。

酒井:

集客で困ることはなかったですか?

齊藤さん:

出版社時代に広告やっていましたが最初に広告打っても効果がないとわかっていたので、3年間は料理に集中して口コミを広げようと思いました。

知識がないながら、いい料理を出そうと努力したけれど、現代は中小企業にとって辛い世の中に仕組みがどんどん変わっていってるし、人件費や食材の値段も上がってるし飲食の運営にマイナス面が多くて苦しかったですね。

お皿に想いを乗せる仕事

酒井:

店名の由来は?

齊藤さん:

創業当時の「カジュアルフレンチれすとらんさいとう」は、食べる人にとって、日本の食材で日本を意識して欲しいと思い、ひらがなをとり入れました。

スープを作る時に洋風の出汁をとっていましたが違和感があり、行きついたところは和出汁でした。

和食はユネスコの無形文化遺産にも指定されていて、日本が培ってきた技術・手法でとる出汁は日本の食材に一番しっくりくるんですよね。

酒井:

洋食のレストランで和出汁が合うとは意外です。

齊藤さん:

うちのポタージュのベースは和出汁が入っているのですが、野菜の味を壊さないことに気が付いてからは、和出汁をベースにして日本の調味料を使うメニューが増えていきました。

10年経って、移転のタイミングで改名することになり、コンセプトを考え直した時に、野菜を売りにしたレストランにするには?とみんなで考えました。
悩んだ末、店名に「野菜」ってつけちゃえばいいんじゃない?という言葉が腑に落ちて
野菜レストランさいとう」に改名し、2015年に今の地に移転しました。

酒井:

HPに「身体がよろこぶ料理を食べてほしい」と想いが書かれていますが、野菜で健康になって欲しいという想いが、店名にも込められているのでしょうか?

齊藤さん:

身体を壊した時に食べたきゅうりの衝撃がまさしく「身体がよろこぶ」といった感覚を身体の隅々まで感じたので、その表現を使っています。
うちは、ご先祖様から農業をやっていましたが、今は自分で野菜を育てることはできないので、都市と農家さんが多く隣接している横浜市周辺や三浦の野菜や果物を仕入れています。

酒井:

そこで齊藤さんの想いを乗せているんですね。

齊藤さん:

地産地消であればなんでもいいという話ではなく、食材も料理も「人」が作っています。

作る側はただ作っているのではなく、バックグラウンドやストーリーもそれぞれあって、伝えたい想いが沢山あります。
農家さんの想いもお皿に乗せて料理を出すのが僕の仕事だと考えています。

もちろん肉・魚も美味しいけど、そういったこともあり野菜がメインになるのは必然的な流れでした。


ご自身のご経験から食の大切さと、農家さんの想いもお皿に乗せて発信している齊藤シェフ。

次回はレストランのメニューやこれからのことについてお話を伺っております。
後編もお楽しみに。

後編はこちら

店舗情報

店名
野菜レストランさいとう
住所
神奈川県横浜市港北区菊名6丁目5−16
電話番号
045-434-1761
営業時間
Lunch :11:00〜13:00 / 13:30〜15:30
Dinner:17:30〜22:00 (Lo.20:00)
定休日
月曜日
ホームページ
https://restaurantsaito.com/
Instagram
https://www.instagram.com/rest1968/
その他
席数:36席、全席禁煙、駐車場:有( 専用駐車場3台分完備)

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文/小菊
撮影編集/松本瑞生

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この記事を書いた人

酒井洋輔

酒井洋輔

編集長
くらしとすまいの松栄三代目。妙蓮寺生まれ・妙蓮寺育ち。農業を参考に、不動産と建築、街づくりが循環し、持続可能な形で成長するビジネスモデルを探求中。

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